自覚的な健康観と心臓疾患

女性の狭心症や心筋梗塞など心血管系のイベントの予測因子として、自覚的な健康度が重要であるという論文が、Psychosomatic Medicine 誌に掲載されました。

http://www.psychosomaticmedicine.org/content/72/6/549.full

女性は特に自身の身体の健康度に対する感覚が鋭いのか、男性でもそうなのかはわかりません。今回の研究では、自分で感じるものは結構当たっているかも、ということでしょう。

自分がいま健康なのか、そうでないのか、調子がいいのか、疲れているのか、からだに対する正しい感覚を持つことは、健康を維持する上でとても重要です。からだについての感覚がおかしくなった状態を、アレキシソミア(失体感症)といわれることもあります。


こころの症状とからだの症状

日本人は心理的な症状に対して「恥じる」気持ちが他の国の人に比べて大きいようです。

先日もある患者さんが、
「風邪を引いて仕事を休んだおかげで、精神的に休むことができて今は調子がよい。」
と言われていました。

その方は自分に厳しく、気持ちが落ち込んでいても、休むことは許されないといいます。
ところが、風邪という身体の病気だと、休むことが許せる。「身体の風邪」は休むことが許されても、心が落ち込んでいる「心の風邪」は、休むことが許されないのです。

抑うつ症状がメインであっても、精神的な病名では周囲の理解が得られにくいから、「自律神経失調症」などの身体的な病名にして欲しいと言われることもあります。それだけ、「心の症状」は理解されにくく、「恥」という意識があるのでしょう。

 

「身体化」の状態でも、心の悲鳴や葛藤に気付くことは容易ではありません。心の悲鳴や葛藤を認めたくないという意識があるからか、この「身体化」は比較的日本人に多いという説もあります。
欧米では、精神症状を身体症状として表す「身体化」は低レベルのことと思われる傾向があるようです。逆に、精神症状を正面から扱うことに抵抗は少なく、カウンセリングなどを受けることは文化的レベルの高い人に多いようです。

 

からだの症状が心の悲鳴であったり、こころの症状が身体の悲鳴であったりすることがあります。 いずれにしても、症状として表れているからには何らかの「意味」があるのですから、無視するわけにはいきません。
心の症状も身体の症状も、過度に振り回されたりとらわれすぎることも、目をそらしたり軽視することもなく、正面から向き合って、その「意味」を考えることが解決への一歩となるようです。


向き合うこと

自分のいやなところや、もやもやしているところ、気になるところ、としっかり向き合っていくことが、心療内科の治療では大切になってくることがあります。

でも、そんなの「しんど~い」という場合もあります。

そんなときは、ひとまずは向き合って、すぐにどうこうせずに、それをそこに「おいておく」ということはあってもいいと思います。


思いやること

パッチ・アダムスという米国の医師があります。

映画「パッチ・アダムス」によると、彼はいろいろと悩み、自殺未遂までしていたこともあったが、あるきっかけから、人を助けることで自らが救われるということを知り、医師となります。
そして、無料で医療を受けられる病院を作ったりして大活躍しています。

「ひとを思いやるという人生を送ることによって、自分のなかで一番深い平和と安らぎを得る」
と彼はいいます。

自分を大事にすることと他人を大切にすることは、両方とも大事。

やはりこの医療の原点を忘れてはならないと思う次第です。


割にあわない?

心療内科は割にあわない?

他の科でさんざん検査をして異常がないけど、症状が続いて患者さんも医療者も困り果てた患者さんが紹介されて来る。
今の診療報酬では検査も薬もなければ儲からない。だから一生懸命やっても割にあわない、とも言える。

でも眼に見えない形で、どこかで割にあっているのかも。だからこそ、一見割に合わなくてもやっているのでしょうね。