先日、ある患者さんが「もうすっかりよくなりました」と笑顔で語られました。いろいろなストレスがたまたま一度に重なったのをきっかけに、頭痛などの症状がでてきた方でした。
大学病院の心療内科では、心身症の患者さんがすっきりとよくなることはそう多くないのですが、中にはこういうケースもあります。
では、どうやってよくなるのか。
いろいろなケースがあり、きっかけもさまざまですが、その中の一つに、つらい状況を「十分に言葉にして語る」ということがあります。ただ、つらい状況を言葉にするのはそう簡単なことではありません。
話せる環境、そもそも言葉にする力、聞いてもらえる相手、など、いろいろな条件がそろわないとできません。もう一つ大事なことは、その言葉を「そのままに受け止めてもらう」ことです。「そのままに」というのがミソです。
それができた場合、ストレスに感じる状況が変わってなくてもよくなることがあります。言葉にすることは、単純にみえて意外に大きな効果があるのです。言葉にすることで、自分の内にだけあったものを、誰かと共有することができ、自分でも客観的にみることができます。
少し難しくいうと、主観の客観化のプロセスを経る、ともいえるでしょう。
言葉とはそういう意味でも、素晴らしいもの。
言葉にならない感覚と、あえて言葉にすることと、両方とも大切なのですね。
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