こころの症状とからだの症状

日本人は心理的な症状に対して「恥じる」気持ちが他の国の人に比べて大きいようです。

先日もある患者さんが、
「風邪を引いて仕事を休んだおかげで、精神的に休むことができて今は調子がよい。」
と言われていました。

その方は自分に厳しく、気持ちが落ち込んでいても、休むことは許されないといいます。
ところが、風邪という身体の病気だと、休むことが許せる。「身体の風邪」は休むことが許されても、心が落ち込んでいる「心の風邪」は、休むことが許されないのです。

抑うつ症状がメインであっても、精神的な病名では周囲の理解が得られにくいから、「自律神経失調症」などの身体的な病名にして欲しいと言われることもあります。それだけ、「心の症状」は理解されにくく、「恥」という意識があるのでしょう。

 

「身体化」の状態でも、心の悲鳴や葛藤に気付くことは容易ではありません。心の悲鳴や葛藤を認めたくないという意識があるからか、この「身体化」は比較的日本人に多いという説もあります。
欧米では、精神症状を身体症状として表す「身体化」は低レベルのことと思われる傾向があるようです。逆に、精神症状を正面から扱うことに抵抗は少なく、カウンセリングなどを受けることは文化的レベルの高い人に多いようです。

 

からだの症状が心の悲鳴であったり、こころの症状が身体の悲鳴であったりすることがあります。 いずれにしても、症状として表れているからには何らかの「意味」があるのですから、無視するわけにはいきません。
心の症状も身体の症状も、過度に振り回されたりとらわれすぎることも、目をそらしたり軽視することもなく、正面から向き合って、その「意味」を考えることが解決への一歩となるようです。