COLUMN <MIND-BODY THINKING.COM-こころとからだの対話->で「精神科」と一致するもの

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01) 心療内科と心身医学
PSYCHOSOMATIC MEDICINE / MIND-BODY MEDICINE

 心療内科とは
 心療内科・精神科・神経内科の違い
 心療内科とストレス
  心と身体の関係-心身相関-
 心と身体の関係-自律神経系
 
02) こころとからだの対話
Mind-Body Dialogue
 からだ・気づき・アプローチとは
 バイオフィードバック・Biofeedbackとは
 リラクセーションとは
 失感情症 (アレキシサイミア) その(1) アレキシサイミア その(2)
 乖離と統合-キャッチボールと対話のプロセス
 心理療法とからだ-「心」と「身体」
 唄を忘れたカナリヤは...

03) 機能性身体症候群

04) ストレス・アセスメント
STRESS PROFILE 
  心療内科とストレス
 ストレス・プロファイル Psychophysiological Stress Profile (PSP)
 ストレスに対する自律神経系の反応

09) その他

10) 心身医学の研究

心身症の患者に アレキシサイミア(Alexithymia)=失感情症
の傾向があると提唱したのは、アメリカのSifneos(シフネス)という精神科医です。このような傾向のある人たちには従来の分析的な心理療法が行いにくいことなどから、これらの人たちには別の心身医学的アプローチが必要であると考えられました。

以後、アレキシサイミアは心身症の病態の一つの重要な要素と考えられてきました。
アレキシサイミアの特徴を簡単に言うと

・自分の感情や、身体の感覚に気づくことが難しい(鈍感である)。
・感情を表現することが難しい。
・自己の内面へ眼を向けることが苦手である。

といったことが挙げられます。すなわち、内面の感情や感覚の気付きが低下して、感情を伝えることも障害されている状態をいいます。

これには、発達早期の母子相互の感情的な交流が障害されていることが関与しているとも言われています。また、家族病理との関係や社会文化的な因子との関連もあると言われています(感情の表現をあまりよしとしない民族に、アレキシサイミアの傾向が高いなど)。

生物学的なメカニズムとしては、
・感覚や感情を司る脳幹部や大脳辺縁系と、認知や言語機能に関与する大脳皮質との伝達機能障害が関係している
・左右大脳半球の機能の解離がある
・右大脳半球で何らかの機能障害がある
などの説があります。

感情の気付きや表現に乏しいと、徐々に内面に抑圧された感情がたまりやすくなり、身体症状化することになります。そういう傾向がもともとあって心身症になるという場合もありますが、あまりにストレスフルな状況の中で、「そうでもしなければやってられない」という心理機制から、アレキシサイミアの状態になることも考えられます。

「特に問題ありません」「全て何事もうまく言っています」といいながら、説明できない身体症状が続いている人達の背景に、このような病態が隠されていることがあります。このような場合は、少しでも感情を表出できるように援助することが大切になってきます。

このようなアレキシサイミアは アレキシソミア(Alexisomia)=失体感症
とも深く関係しているとされています。実際、感情と身体の感覚への気づきとは深く結びついているようです。
このアレキシソミアは、心身症においてさらに重要な概念なので、別の項に述べることにします。

アレキシサイミア その(2)

認知療法

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◇心の色めがね◇  


認知療法は、アメリカのペンシルベニア大学精神科のアーロン・T・ベック教授がそれまでの精神療法の長所を取り入れながら作り上げた精神療法です。

「うつ」の人には特有の悲観的なものの見方や考え方があり、それが気分の沈み込みと関係している。
そういう非現実的な「ものの見方や考え方」を変えて現実的、客観的に問題に対処していけるようにするのが認知療法です。

「うつ」の人は歪んだ認知が自動的な思考になってしまっていて(自動思考)、"心の癖"のようになっています。それが自分の性格なんだ、と諦めてしまう人もあるかもしれませんが、それも認知の歪みにすぎないと見ます。
認知療法は様々な手段を駆使して、その歪んだ認知を変えていき、"心の癖"を変えていきます。

こうした認知の歪みにはいくつかのパターンがあります。
「うつ」の世界に浸っているとなかなかそれに気づきませんが、認知療法はまず、その認知の歪みに気づくことから始まります。
以下にその認知の歪みのパターンを示します。

※認知療法について詳しくお知りになりたい方は以下の本を参考にするとよいでしょう。
○「うつ」を生かす うつ病の認知療法 大野裕著 星和書店
○「いやな気分よさようなら」 自分で学ぶ抑うつ克服法 デビッド・D・バーンズ著

1.全か無か思考
 ものごとを極端に、「全か無か」「白か黒か」に分けて考えようとする傾向のこと。
ちょっとしたことで「すべて台無し」とか「何もかもおしまい」という極端な判断を下す。ものごとは「絶対に○○」「全て○○」ということはなく、何割かそういう面もあるが残りの何割かはそうでない、というのが本当であるが、そのように見れない。このゆがみのもとには完全主義がある場合が多い。
2.一般化のしすぎ
 一つか二つかの事実を見て、「全てこうだ」と思いこむ傾向。一度か二度起こったことが、この先も永遠に起こり続けるように思いこむ。
 たとえば、ある人に嫌われたからといって世界中の人に嫌われたように思い、「自分はもう誰からも好かれない」と思ってしまう。
3.選択的抽出(心の色メガネ)
 物事の悪い面ばかりが目につき、他のものは何も見えなくなってしまう。
悪い事もあれば良い事もあるのだが、うまくいったことは目に入らず、悪いことばかりが見えて(心の色メガネ)落ち込んでしまう。
4.マイナス思考
 良いことが見えなくなり、何でもないことや、良いことまでも悪いように悪いように考えてしまう傾向。例えば、うまくいったことでも「たまたまうまくいっただけ」「誰でもできること」と正当に評価できず、ほめられても「お世辞を言われている」と悪いようにしか思えない。
5.レッテル貼り
 「一般化のしすぎ」や「選択的抽出」がより極端になり、ちょっとした失敗体験などをもとにそれが自分の本質であるかのように自らにレッテルを貼ってしまう。
「自分は駄目な人間」というのが典型的なパターン。自らにそういうレッテルを貼ることでますますそのように思えてくるので、さらに落ち込み、悪循環に陥る。
6.独断的推論(心の読みすぎ)
 わずかな相手の言動から、勝手に相手の心を読み過ぎて、事実とは違う結論を下してしまうこと。自分の側で誰かがひそひそ話をしているのを見ると「自分の陰口を言っているに違いない」と一方的に傷つき、落ち込んでしまう。「そうであるかもしれないがそうでないかもしれない。それだけでは判断できない。」という客観的な態度が取れなくなる。
 この背景には「他人の評価が自分の価値の全てを決める」という歪んだ考えがあることが多い。「人からどう思われているか」を必要以上に気にして動揺することになる。
7.拡大解釈と過小評価
 自分の持ついろんな資質の中で、悪いところや駄目なところをことさら大きく、重大なことのように思い(拡大解釈)、良いところは小さく見積もってしまう。(過小評価)「自分は悪いところだらけだ」と自己否定的になってしまう。
8.感情的決めつけ
 「自分がこう感じているのだから、現実もそうであるに違いない」と思いこむこと。
絶望感にとりつかれていれば、客観的にみれば大したことではなくても「事態は絶望的だ、もう駄目だ」としか思えない。
 また、問題をすぐに「取り返しのつかないこと」と考えてしまう。世の中のたいていのことは取り返しがつくものだが、すぐに「もう全て終わり」「絶体絶命」という気分になってしまう。
9.「すべき/せねばならない」思考
 何をするにおいても「こうすべきだ」「こうあらねばならない」と厳しい基準を作り上げてしまう思考パターン。完全主義とも関連する。「常に明るく振る舞っていなければならない」など。厳しい基準を課すものだから何をやっても満足感は得られず、自己嫌悪に陥ってしまう。その連続に嫌気がさしてどんな努力も無駄に感じ、やる気を失ってしまったりする。
10.自己関連づけ
 身の回りで起きる良くない出来事を何でも自分の責任だと思ってしまうこと。
子供の成績の悪い母親は「自分が駄目な母親だから」と全て自分の責任だと感じてしまう。必要以上に周囲の出来事を自分の責任にしてしまうことで重荷を背負い込んでしまう。

どこがどう違うの?

心療内科と精神科や神経内科との違いについて知らなければ受診できない、ということではありません。しかしこれをよく理解することで、あちこち回らされて時間やお金を無駄にしなくてすむので、知っておいて損はないでしょう。

心療内科は主に心身症を扱います。
心身症については「心療内科とは」で詳しく述べたので、参照して下さい。心身症は身体疾患ですから、身体の症状が主訴(主たる訴え)ということになります。

精神科は精神疾患を専門に扱う科です。
わかりやすく言えば心の症状、心の病気を扱う科であるということです。心の症状とは、不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。

精神症状、精神疾患に関する専門家が精神科医ですから、そういう病態の場合には、たとえ軽症であっても精神科が適当ということになります。これにはうつや統合失調症はもちろんですが、神経症や不眠症も入ります。
そのような疾患で身体症状を伴う場合もありますが、基本的に精神疾患がメインであれば精神科ということになります。

神経内科は脳神経系の疾患を取り扱います。
脳血管障害やパーキンソン病、ニューロパチーなどの神経の病気を扱う科です。
この場合の「神経」というのはいわゆる「神経が太い」とか「神経質」という神経ではなく、実際に筋肉などの組織につながって、信号を伝えたりしている実体のある「神経」のことです。

神経内科はそれほど混乱されることはないのですが、心療内科と精神科は紛らわしく、混乱があるようです。ごく大まかに言ってしまえば、身体の症状がメインならば内科または心療内科、心の症状が主体ならば精神科ということになりますが、実際にはどちらか紛らわしい場合もあります。
紛らわしい場合にはどちらかに相談することで、より適切なところへ紹介され
ることになります。


心療内科と精神科

よく町の開業医(クリニック)で、「心療内科」という標榜がなされていても、実際は精神科である、ということがあります。なぜそうなるのかというと、「精神科」とすると敷居が高く、患者さんが来にくいからということのようです。
これはしかし、混乱の基にもなっています。

「心療内科」という標榜はもともと心身医学から出てきた言葉ですから、それを「軽症の精神科」と勝手に解釈して使うべきではありません。
もし、「精神科」という名前がよくないならば、より親しみやすい名前に変えるのが適切でしょう。

「心療内科」は精神医学とは違うところから出てきていますので、その名前を使って精神科の医療を行なうのは問題があります。「耳鼻科」と標榜しながら眼科医が診療するのと同じになってしまいます。

心療内科は「ミニ精神科」「軽症の精神科」とは違う
ということをよく覚えておいて下さい。
精神科の専門医であっても心療内科をほとんど知らない、研修も受けたことがないという医師は沢山います。
逆に、心療内科の専門医であっても精神科の研修を受けていない医師も多くあります。一人でいくつもの専門家にはなれないので、そのこと自体は全く問題ないのですが、標榜は自分が研修を受けた専門の科にすべきでしょう。
その上で、両者の連携も非常に重要です。

では、受診する側からはどう見分ければよいのでしょうか。
標榜が「内科・心療内科・...」となっていれば、本来の心療内科医か、内科医で心療内科を学んだ医師が担当すると考えられます。「神経科・心療内科・...」などとなっている場合はまず精神科医が担当と考えられます。
ですから、身体の症状がメインならば前者を受診すればよいし、心の症状がメインならば後者を受診すればよいということになります。


心療内科は内科の一分野と考えることができます。

この方が理解しやすいかもしれません。つまり、内科にも消化器内科、呼吸器内科、循環器内科、神経内科というように専門科があり、それぞれが連携して治療を行っています。その中に心療内科もあるということです。心療内科医は基本的に内科医であるということです。

ですから、心療内科医でありながら、風邪や高血圧、糖尿病といった一般内科的な病気をプライマリケアのレベルで診ることができない、ということは考えられません。消化器内科医といっても一般内科的な疾患を診ることができ、その上に専門の消化器をやっているのと同じです。

しかし、心身医学のより本質的なところは、疾患の捉え方やアプローチの仕方にあります。
すなわち、心身医学は
「こころとからだ、そして、その人をとりまく環境等も考慮して、それぞれの要素を分けずに、その関係性(心身相関)も含めて、統合的にみていこうする医学」
ということができます(⇒心療内科とは)。

このようなアプローチは内科だけでなく、耳鼻科や整形外科などの他の科でも応用できます。その場合は「心療耳鼻科」とか「心療整形外科」と呼ぶのでしょうか。まあ、呼び方はどうでもいいのですが...。
少なくとも実際の医療の現場では、そのようなアプローチを必要とするケースが増えているというのは紛れもない事実です。


最後にまとめて、受診科の選択の例を挙げると...。

○身体の症状がメインだが、検査をしても異常がない、あるいは、経過からストレスなどが関連していると思われる。→心療内科
○不眠や不安、イライラ、抑うつ、幻覚など、心の症状がメインである。→精神科
○身体の動きがおかしい、ふるえる、傾く、力が入らないなど神経の異常が
疑われる。→神経内科。
○身体の症状と心の症状が同じくらいあり、どちらがメインか区別がつかない。
 →いろんな可能性があるので、まずは内科を受診して器質的な疾患を除外する。
あるいは、内科・心療内科・精神科のうちのいずれかにまずは電話で適切かどうか相談する。
○最近ストレスを強く感じることがあり、それ以降身体の調子が悪くなったが、それ以前は全くそんなことがなかった。→心療内科

といったことになります。もちろんこれ以外にもいろんなケースがあります。
また、施設によって独自の事情もあるので、これが全てに当てはまるというわけではありません。実際には選択に迷うことも多々あるでしょう。
そんなときは、無駄足を運ぶ前に、まずは医療機関に電話で問い合わせをしてみることをお勧めします。

心療内科とは

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心療内科は心身医学を内科の領域において実践する診療科です

心身医学というのは...
・病気を身体だけでなく、心理面、社会面をも含めて、
・それらを分けずに、
・それらの関係性を評価しながら、
・総合的・統合的にみていこうとする医学
ということができます。

分かりやすく言えば、
「こころとからだ、そして、その人をとりまく環境等も考慮して、それぞれの要素を分けずに、統合的によくしていこうとする医学」
と言えるでしょう。


心療内科が主な対象とするのは心身症です。

心身症の定義は次のようになっています。
(日本心身医学会, 1991)
「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的、ないし
機能的障害が認められる病態をいう。
ただし、神経症やうつ病など他の精神障害に伴う身体症状は除外する。」

少し難しい定義ですね。
まず、「器質的障害」というのは胃炎や気管支炎などの「炎症」や癌をはじめとする「腫瘍」など、物理的(物質的)に異常が生じる障害のことです。これはレントゲンやカメラなどの検査でとらえられることがほとんどです。

もう一つの「機能的障害」というのは、器質的な異常がなく、従ってレントゲンやカメラなどの検査をしても異常が見つからないけど、その動きや働き(機能)が障害されているものを言います。

例えば消化管でいうと、癌や炎症はないけど腸の動きに異常があり、その為に腹痛や便秘・下痢などの症状が出る......"過敏性腸症候群"などがこれにあたります。

このいずれにも心理・社会的因子が関与することがありますが、特に二つ目の「機能的障害」に関与することが多いです。(これらの関係を「心身相関」と言います。)器質的・機能的障害に心理・社会的因子が密接に関与している病態を心身症として扱うことになります。

よく、「ストレスが関係している」などと言われるのは、心理的因子が関与しているということになります。ストレスだけでなく、幼少時の体験や性格、社会的スキルや対処方法に問題がある場合も同じです。
社会的因子というのは、会社での労働環境が劣悪であるとか、家族関係に問題があるとか、災害のトラウマなどを指しますが、心理的因子とはっきり区別することはできません。

これらは多かれ少なかれ、病気に関与しているものなのですが、その割合が大きく、その面を考慮した方が適切に治療できる場合(もっといえば考慮しないとどうしようもない場合)に「心身症」として扱うことになるのです。
ただし、心理・社会的因子と病気との関連は、単に「心が原因で病気が生じる」というような直線的なものとは限らないという点に注意する必要があります。

神経症やうつ病などの精神障害でも身体症状が出ることがありますが、これは「除外する」となっています。それは精神科の領域になるからです。心身症はあくまで、「身体疾患の中で」とあるように、身体疾患の一つなのです。
以上が心身症の定義です。


心身医学がでてきた背景

日本の医学は西洋医学に基づくものですが、それは身体を各部分に分けて、それぞれの専門家がそれぞれのパーツを科学的にアプローチしていこうとするものです。

たとえば、内科の中でも狭心症などの心臓関係は「循環器内科」、胃潰瘍・胃炎などの内臓関係は「消化器内科」、喘息などの呼吸器関連は「呼吸器内科」、ホルモンの異常などによるものは「内分泌内科」、といった具合です。これも非常に大事なことで、心身医学はこれを否定するものでは決してありません。

しかし、病態が複雑化し、慢性的病態や生活習慣病、機能的病態などが増えてきて、そのような捉え方だけでは対応できないものが増えてきたのです。そこで、そのような病態により適切に対応できる医学が必要となり、心身医学が出てきたのです。

上に述べたような心身症を心身医学的に扱うのが心療内科である、ということです。
もう一度、分かりやすくまとめて言えば、
「こころとからだ、そして、その人をとりまく環境等も考慮して、それぞれの要素を分けずに統合的によくしていこうとする医学(医療)」
が心療内科であり心身医学である、ということになります。

2024年4月

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