アレキシサイミア(失感情症) -その1-こころの声が聞こえない

心身症の患者に アレキシサイミア(Alexithymia)=失感情症
の傾向があると提唱したのは、アメリカのSifneos(シフネス)という精神科医です。このような傾向のある人たちには従来の分析的な心理療法が行いにくいことなどから、これらの人たちには別の心身医学的アプローチが必要であると考えられました。

以後、アレキシサイミアは心身症の病態の一つの重要な要素と考えられてきました。
アレキシサイミアの特徴を簡単に言うと

・自分の感情や、身体の感覚に気づくことが難しい(鈍感である)。
・感情を表現することが難しい。
・自己の内面へ眼を向けることが苦手である。

といったことが挙げられます。すなわち、内面の感情や感覚の気付きが低下して、感情を伝えることも障害されている状態をいいます。

これには、発達早期の母子相互の感情的な交流が障害されていることが関与しているとも言われています。また、家族病理との関係や社会文化的な因子との関連もあると言われています(感情の表現をあまりよしとしない民族に、アレキシサイミアの傾向が高いなど)。

生物学的なメカニズムとしては、
・感覚や感情を司る脳幹部や大脳辺縁系と、認知や言語機能に関与する大脳皮質との伝達機能障害が関係している
・左右大脳半球の機能の解離がある
・右大脳半球で何らかの機能障害がある
などの説があります。

感情の気付きや表現に乏しいと、徐々に内面に抑圧された感情がたまりやすくなり、身体症状化することになります。そういう傾向がもともとあって心身症になるという場合もありますが、あまりにストレスフルな状況の中で、「そうでもしなければやってられない」という心理機制から、アレキシサイミアの状態になることも考えられます。

「特に問題ありません」「全て何事もうまく言っています」といいながら、説明できない身体症状が続いている人達の背景に、このような病態が隠されていることがあります。このような場合は、少しでも感情を表出できるように援助することが大切になってきます。

このようなアレキシサイミアは アレキシソミア(Alexisomia)=失体感症
とも深く関係しているとされています。実際、感情と身体の感覚への気づきとは深く結びついているようです。
このアレキシソミアは、心身症においてさらに重要な概念なので、別の項に述べることにします。

アレキシサイミア その(2)

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