一つの例として筋肉の活動を電気信号で表した「筋電図」を考えてみます。
筋肉を緊張させると、筋肉の活動は大きくなり、筋電位が高くなります。この緊張は自分である程度は"感じる"ことができます。
もし筋肉をリラックスさせたいと思ったらこの筋肉の活動レベルを落せばよいことになります。しかし実際には、なかなか思うようにはリラックスできないことも多いのです。
弛緩 緊張 弛緩 |
つまり、
◆私たちの感じる緊張度と実際の筋電位は解離していることも多い。
◆緊張度を思うようにコントロールできないことも多い。
のがふつうです。
そのために知らず知らずのうちに過緊張状態になって、それが習慣化したために、慢性的な痛みを感じたり(慢性疼痛、筋緊張型頭痛など)、思うように動かなくなったりすることがあります(書痙、斜頸など)。
バイオフィードバックを用いることにより、この筋電位と実際に感じている緊張度とを近づけることができます。言い換えれば筋緊張のセルフコントロールが可能になります。
筋肉の緊張からくる肩こりや緊張型頭痛、書痙などのケースでは、
1)症状は自覚しているが、筋肉の緊張に気づいていない。
2)緊張に気づいてはいるが、緊張を取ることができない。
という2つの場合があります。
1)の場合は、「知らず知らずのうちに緊張してしまっている」という場合で、その自覚に乏しいわけです。知らず知らずのうちに身体のある部分に力が入っていることは意外に多いものです。そのような場合は、それに気づくことが第一歩です。
2)の場合は、「なかなか思うように緊張が取れない」「力が抜けない」という場合で、これも実際によくあるケースです。この場合は、力の抜き方が分からない、どうやってリラックスすればよいかわからない、ということですから、そのやり方を知って、学習することが第一歩となります。
このいずれにも、バイオフィードバックが役に立ちます。
まず、筋電図をリアルタイムでフィードバックし、力を入れたり抜いたりしたときの変化がわかるようにします。ここで、筋電位が上がったり下がったりしたときの身体の感覚の違いに注意するようにします。
次に、筋電位を思うようにコントロールできるよう練習します。これには筋弛緩法などの特定の方法を用いる場合と、特に方法は用いず、自由に行う場合とがあります。
いずれにしても、初めはなかなかコントロールが思うようにできませんが、重ねるうちにコントロールが可能になります。生理学的には、脳の中に今までに無かった新たな回路を作っていく、ということもできます。そして、最終的にはフィードバックはなくても身体の状態を知って調整できるようになることを目指します。
コメントする