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からだの声をきく、具体的なアプローチの方法です。
これには決まった答えはなく、日々模索しているところですが、現在のところは次のような方法を適宜組み合わせて行っています。

(1) 何らかの身体からのアプローチ(主にリラクセーション法)を行う。
 自律訓練法、リラックス呼吸法、筋弛緩法、場合によっては催眠など。
 もし治療者が何らかの代替療法を行える場合は、それを用いることもあります。

(2) バイオフィードバックを用いる。
 身体で起こっている変化を眼に見える形にします。
 下記の例を参照して下さい。

(3) 心身医学の枠組み
 枠組みとして、治療者クライエントの関係も考慮した、心身医学的アプローチの枠組みを用います。

(4) (1)-(3)のアプローチで出てきたことをコンセプトに基づいて扱う
 どこまで扱うかは治療者の力量や枠組みによって変わります。


例)バイオフィードバックを中心に行う場合(他の場合でもかなり共通するプロセスです)。

1) バイオフィードバックによって、普段は気づかない、刻々と変化するからだの状態をとらえます。フィードバックされた身体の状態と、自分で感じるからだの感覚との間の乖離に気づくことが手掛かりになって、「身体との対話」が可能になります。
また感情によって動く指標を用いる場合は、一種の外在化の形になります。

2) 身体との対話を通して身体感覚や心身相関など、いろいろな気づきが深まり、それを治療者と共有します。そのような気づきは、やがて症状の意味に気づくことにつながり、自己の統合がなされて本来の自分を取り戻します。

3) 感情の外在化を行った場合は、自己の感情に気づき、それを治療者と共有することでカタルシスなどの心理的プロセスが起こります。
 また、身体の状態がどのような感情と結びついているかを確認する中で、症状の意味(身体が伝えてくれていること)に気づき、自己の統合へと進みます。

心身症や機能的な身体疾患では、自分の感情に気づきにくくなったり、からだの感覚に気づきにくくなったりすることが、病態に関わっていると言われています。

アレキシサイミア(Alexithymia; 失感情症)は感情の気づきや表現が困難で、内面への気づきに乏しい状態です。
アレキシソミア(Alexisomia; 失体感症)は身体感覚の気づきが低下した状態です。

心身医学の草分けである故池見ら(1986)は
「アレキシサイミアのケースでは感情だけでなく、身体感覚の気づきも低下していることが多い」
と述べ、その状態をアレキシソミアと呼びました。
一方で、身体の感覚が過敏になるという報告も多くあります。

現代社会における生活の中では、ストレス、アンバランスな生活、過度の適応、行動の歪み、などからさまざまな乖離やバランスの崩れなどが起こってきます。例えば、感情と知性のコミュニケーションがうまくいかない、身体と知性のバランスが悪くなる、などです。慢性的なストレスにさらされた状況では、感情や身体の気づきを鈍くすることで自分を守る(=防衛)ということもあります。

感情の気づきや表現が低下した状態では、本能的なレベルの情動が感情として発散されないために抑圧され、抑圧された感情が身体の症状となって表れるということが考えられます。それが、身体症状の過敏性という形になることもあります。

そのようなケースでは前述のように、身体感覚の気づきも低下していることが多く、身体の声に気づかないことが症状の持続因子になっていることがあります。

このような状態では、自分のからだの感覚や感情に気づいていくというプロセスや、その意味を知ることが重要です。
言い換えれば、無視していた、あるいは、聞かないようにしていた「身体の声」「心の声」に耳を傾け、心や身体とのコミュニケーションを回復するプロセスです。そして、身体の症状の持つ意味(からだが伝えていてくれること)を知ることが重要です。

「身体の声」が聞けるようになると「心の声」にも気づきやすくなります。その第一歩として「身体の声」に耳を傾けるところから入るのが「からだ・気づき・アプローチ」です。

例えばバイオフィードバックでは、普段は気づかない、刻々と変化するからだの状態をとらえます。フィードバックされた身体の状態と、自分で感じるからだの感覚との間の乖離に気づくことが手掛かりになって、「身体との対話」が可能になります。バイオフィードバックは、いわば心と身体をつなぐ「架け橋」です。

「身体との対話」を通して、感情との対話や心との対話もできるようになり、心身の本来の姿を取り戻していきます。

2024年10月

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