心療内科とストレス

「ストレス」とは

こころとからだ

「ストレス」の重要性が広く認識されるようになり、
企業では「ストレスチェック制度」も始まっています。「ストレス」にかかわる問題は心療内科において重要ですが、そもそも「ストレス」とは何か。言葉が一人歩きしている側面も多いようです。

医学・生理学領域で始めて「ストレス」という言葉を使ったのはハンス・セリエという生理学者です。セリエによると、何らかの「ストレッサー」が身体に加わったとき「ストレス反応」が起こり、この反応した状態を「ストレス」としました。

その後ホームズ・レイやラザルスらによって、今日よく使われる「心理社会的なストレス」という概念が確立してきました。特にラザルスは、「日常生活の些細ないらだち事(Daily Hastless)」の繰り返しが、ライフイベントのような大きなストレスよりも重要であるとしました。

ストレス反応と回復のシステム

生理的なストレス反応は、大きく2つのシステムからなると考えられています。
1つは「交感神経系-アドレナリン分泌の反応を中心とするもの」
もう1つは「副腎皮質-コルチゾール分泌を中心とするもの」
です。このほかに、免疫系、腸内細菌叢などの反応もあります。

前者は比較的「速い」反応で、瞳孔が開く、心拍が速くなる、血圧の上昇、発汗などの交感神経系の反応が中心です。後者は比較的「ゆっくりした(遅い)」反応で、消化管の潰瘍や免疫機能の低下などをもらたします。

こういうストレス反応が起こっても、「元に戻す働き」が私達の身体にはそなわっています。なので私達は生活のなかでストレス反応を繰り返しながら、健康を維持することができるのです。

「ホメオスタシス」と「アロスタシス」

身体内部の環境を一定に保とうとする働きのことを「ホメオスタシス(恒常性)」と言われます。でも実際には常に一定にするというより、ストレスに対応しながら「変化して適応」しています。それを生理的に説明したのが「アロスタシス」です。

「アロスタシス」では、ストレスに過剰に反応したり、反応しないのが長く続くと、元に戻ることができなくなり、ついには病気に至ってしまうなどとして、そのメカニズムを説明しています。

ストレスに「気づく」こと

「うつ」など精神疾患の患者さんは、ストレスを敏感に感じすぎて病んでしまうのに対し、心身症の患者さんはストレスをストレスと感じず、無意識に蓄積して身体の症状につながってしまうと言われています。

このどちらのタイプかによって対処方法は変わるので、自分のタイプを知って対応することが大切です。ストレス反応にも人によって特徴があり、それを評価する方法に「ストレスプロファイル」があります。

「ストレスは人生のスパイス」

前出のセリエは、「ストレスは人生のスパイスである」と言っています。
スパイスは上手に使えば料理をひきたてるように、ストレスも上手につきあえば人生をひきたてるものになるでしょう。ストレスのない人生はありません。上手につき合う方法を一緒に考えていくのも、心療内科の役割の一つです。

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