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ストレス プロファイル Psychophysiological Stress Profile

現代の社会状況では、 ストレス の心身への影響がますます大きくなっており、医療においても、心身症、生活習慣病、機能性疾患など、ストレス関連疾患の比重が年々増加しています。これらの疾患では、ストレス(心理社会的因子)が複雑かつ慢性的に関与した病態を呈するため、薬など従来の方法だけでは治療が難しくなっています。

「ストレスプロファイル (Psychophysiological Stress Profile: PSP)」 とは、 ストレス によって、身体の生理機能がどのように反応するかをみて、心身相関のアセスメントを心身医学的に行う方法です。

ストレス に対する生理反応

ストレスがかかると身体はそれに対応するため、さまざまな反応を起こします。
このようなストレス反応は、我々の心身の健康を保つ上で重要なものです。

  • 自律神経の中の交感神経の緊張(発汗や心拍が速くなるなど)
  • ストレスホルモンの増加(コルチゾールやアミラーゼなど)
  • 免疫機能の変化(ナチュラルキラー細胞など)

これらの働きのおかげで、ストレスがあっても我々は健康を維持しているのです。このうち、自律神経機能を中心とする生理的機能の反応は速く、刻々と変化するためわかりやすい。その変化のパターンには人による特徴<プロファイル>があるとされ、その上にそのときのストレス状況などが加わります。

ストレス プロファイル

ストレスプロファイルでは、日常の仕事などのストレスに近い<メンタルワークストレス>によって、自律神経系や筋緊張など、いくつかの系統の生理的指標の変化や、ストレスからの回復プロセスを調べ、自覚的な身体感覚や心理テストとの関係などを調べます。

通常はストレスによって、次のような反応が起こります。

  • 情動性発汗が増加(手に汗を握る)
  • 末梢の血管が収縮し、皮膚温は低下(手の先が冷たくなる)
  • 心拍数は上昇(ドキドキする)
  • 筋緊張が高まる

情動性の指標は反応が高いけど、血管の反応は低いなど、ある指標で過剰であったり、鈍かったり、ストレス後の回復が遅れたりします。

このように、その人に特有の反応のパターンや、そのときのストレス状況を評価するのがストレスプロファイルです。

ストレス関連疾患におけるストレスプロファイル

これまでの研究から、ストレス関連疾患におけるストレス反応は、健常人と比べて異なったパターンがあることが分かってきました。たとえば、健康な人よりも反応が低いパターンが続くと、病的な状態に移行することが示唆されていて、アロスタティック負荷と言われます。このような低反応のパターンは、ストレス関連疾患の大きな特徴の一つです。これ以外にも、反応が高すぎるパターンや、反応からの回復が遅れるパターンなどが見出されている。

このような反応パターンから、ストレス関連疾患の病態を評価するとともに、どのような心身医学的アプローチが適切かを検討しています。

では、ストレス関連疾患において、本来は健康を維持するためのストレス反応が、なぜ変化してしまうのでしょうか。
我々の身体に備わっているストレス反応は、敵と戦ったり逃げたりするときに必要な状態が想定されており(交感神経機能)、そうでないときは回復して次の活動に備えます(副交感神経機能)。しかし、現代のような昼夜・オンオフの境のないストレス状況では、交感・副交感神経の切り替えやバランスが崩れてしまうのです。

このような状況が慢性的に続くことで、健康な人と異なったストレス反応を起こすようになり、ついにはストレス関連疾患につながってしまうと考えられます。

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