自律神経系

こころとからだ

「こころとからだ」をつなぐルートの中で、比較的わかりやすく馴染みがあり、心身医学的にも重要な自律神経系について、心身医学の立場から述べたいと思います。

自律神経の「自律」というのは、運動神経などのように意識的に働かせることができるものではなく、状態に応じて「自動的に」調節される神経系ということです。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」とがあります。
「交感神経」は、身体を活動、緊張、攻撃などの方向に向かわせる神経で、手に汗を握ったようなときにより働いている神経です。
「副交感神経」は、次の活動に備えて回復する方向に向かわせる神経で、身体を休息させ、内臓の働きを高めたりします。

例えば、自律神経によって調節されるものの一つに心拍数があります。
普通は1分間に約60-80回くらいの心拍がありますが、運動をすると100-150回くらいに増えます。人前で緊張したりすると「ドキドキする」などと言いますが、そのようなときにも心拍数が安静時よりも上がっているのが普通です。

そのようなときには「交感神経」の緊張が「副交感神経」の緊張を上回った状態にあると考えられます。ぐっすりと眠っているときには逆に副交感神経優位となり、その人の変動の中で最も低い心拍数に近い状態になっているでしょう。

先ほどの例で、運動をしたときには「自動的に」心拍数が上がったように、身体の状態や周囲の状況に反応して心拍数は増えたり減ったりします。「これから運動をするから心拍数を上げておこう」などと、意識的に上げるものではないし、通常はできるものでもありません。このように、自律神経というのは意識しないでも自動的に働いて、身体をより適切な状態に持っていこうとしてくれる、言わばありがたい神経なのです。

自律神経系の乱れ

本来はホメオスタシスを維持し、身体を適切な状態に保つシステムなのですが、その働きが乱れたりすると、病態に関与することがあります。

例えばパニック発作では、この「自律神経の乱れ」が何のきっかけもなく急に生じ、不安とリンクして負のスパイラルに陥ってしまいます。また、慢性疼痛では、交感神経の緊張が強くなり、筋肉の収縮や末梢血液循環の低下が起こり、それが痛みを増幅したり長引かせたりします。すると余計に交感神経の緊張が生じるという悪循環に陥ってしまいます。

自律神経は通常意識的に調整できないので、このような悪循環に陥ってしまうと、意識的に元に戻すことが難しくなります。例えば上記のパニック発作が生じると、いくら意識的に落ち着こうと努力しても、かえって発作が強くなってしまうことがあります。

自律神経系の調整

そんな自律神経の働きを調整するにはさまざまな方法があります。
気功、ヨガ、アロマセラピー、マッサージ、鍼灸などの東洋医学的な方法や自律訓練法などです。中でもこのページで紹介している「バイオフィードバック」は、本来自動的に調整され意識していない自律神経の働きを「見える化」して意識とつなぎ、自律神経系の自己調整を試みるものです。

そういう特別な方法でなくても、日内リズムを整える<朝日を浴びて昼はしっかり活動し、夜はゆっくり休む>だけでも効果があります。また、呼吸は上記のさまざまな方法の鍵になるもので、深いゆっくりとした呼吸は交感神経と副交感神経をリズミカルに刺激して活性化する効果があります。

自分に合った方法で、本来の自律神経の働きやバランスを取り戻すことが重要です。

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