04) ストレスアセスメント: 2009年11月アーカイブ

◇心療内科とストレス◇

ストレスとは何か、それにどう対処すべきかという問題は心療内科にとって、非常に重要な問題ですが、同時に非常に難しい問題であります。そもそも、ストレスそのものは悪ではない。しかし、過度のストレスが心身症の主要な原因になったり、ストレスによって精神疾患が誘発されることはよくあることです。

 "私はストレスで参っています" "ストレスにどう対処すればいいんでしょうか"という声をよく聞きます。結論的にはストレスを前向きにとらえ、むしろそれを生かして進む原動力としていく、それが出来れば大成功です。

この領域で始めて「ストレス」という言葉を使った、ハンス・セリエは
「ストレスとは生活のスパイスである」と言っています。
しかし、どうすればそうできるのか、そもそもそれができないから悩んでいるのだ、という訴えが返ってきそうです。

まず、一つよく理解しておかなければならないことは、周りの状況に対する自分の見方や、考え方、とらえ方がストレスを作っているという事実です。
たとえば、職場に嫌な上司がいて、それがストレスになっているとしましょう。そういう同じ状況でもそれをストレスと感じて参ってしまう人と、別にそのように感じることもなくうまくやっていく人とがあります。

だから、嫌な上司から逃れれば全てが解決するというものではないというのはおわかりでしょう。おそらくその上司から逃れたとしても自分を変えなければ、別のまた"嫌な"上司で苦しむことになるでしょう。

それをストレスと捉えてしまう状況が変わらなければ、という側面があります。さりとて、今のままの状況ではどうしてもそれはできないという場合も多いもの。そんなときは、環境を変えるのも一つの策ではあります。しかし、それだけでは先ほども言ったように、また別の人が嫌になる。

だから、環境を変えるのは自分含めた状況を変えるきっかけにするということです。
その為に環境を変えるのであって、自分はそのままで環境だけ変えるのでは状況は好転しないでしょう。環境を変えて自分が変われそうだと思ったら、可能なら環境を変えればよいのです。
しかし、逆に変えると余計にストレスが増えることにもなりかねません。例えば今の上司が嫌だから別の部署に変わったらもっと嫌な上司だったということもあり得ます。

要は自分を含めた状況が変わることが肝要ということですが、どうすれば変わるのか。無理して自分を変えようとしてもなかなか変わるものではありません。

薬を使って今よりもう少し周囲に対する反応の感度を下げるとか、しばらく休養して自分を見つめ治し、エネルギーを回復した上で前向きに考えられるようにしていくとか、仕事をしながらリラックスする法を身につけるとか、一人で抱え込まないで信頼できる第三者に相談し、気分的な負担を軽減させたり、状況を変える手助けをしてもらうとか。いろいろな方法があります。

自分とはどういうものかをよく知るということも大事です。弱点はすなわち特性であり、長所にもなり得ます。最終的には自分の特性、すなわち「自分らしさ」を真に生かしていけるような生き方ができれば、ストレスと感じていたことも前向きに生かせるようになれるでしょう。

そういういろんな方法を提示し、抱え込む負担を専門家として受けとめ、負担を軽減し、いろんな手法を実践していく手助けをするのが、心療内科医のささやかな努めの一つであると思います。
ただし、心療内科医はあくまで手助けをする立場であって治療の主体は患者さんにあるということが重要です。

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