ひ と
人生

人生は底知れず空しい
人生は底知れず淋しい
魂は無劫の寂寥の中を旅する

人は生まれる そして成長する
人生がどういうものかもわからずに人は生まれ成長する
魂は無劫の寂寥の中を旅する

やがて自我に目覚める
愛し、憎み、悲しみ、喜び、そして人は成長を続ける

魂は無劫の寂寥の中を旅する

やがて大人になる 人生の荒波に放り出される
もがき、苦しみ、悶えながら、人は荒波の中を泳いでいく

魂は無劫の寂寥の中を旅する

時には沈みかけ、時にはおぼれそうになりながら
なおも人は荒波の中を泳いでゆく
結婚し、子供ができ、金を儲け
愛し、憎み、悲しみ、喜び、苦しみ、悶えながら、人は人生の荒波を泳いでいく

魂は無劫の寂寥の中を旅する

出合いと別れの中で人は考える
真の故郷はどこにあるのかと

時の流れの速さをかみしめながら
人はなおも泳いでいく
魂は無劫の寂寥の中を旅する

向かうべき方角も分からず
人はひたすら泳いでゆく

やがて歳を取る 体も心も衰える
遠い昔を思い出す あんな時代もあったのか
過ぎ去りし日々はもはや甦ることもない
生き別れ死に別れ 寂しさは日々に増す

やがて一人になる
一人になって人は考える
人生とは何か
病の床の中で人は考える
人と生まれし所以は何か
そして考える
死について
刻一刻と迫り来る死について 人は考える

頼るものはもはや何もない
人は人生を振り返る
過去の夢が頭をよぎる
懐かしいあの人はどこへ行ったのか
懐かしいあの土地は、あの町は、あの建物は...
愛し、憎み、悲しみ、喜んだのも遠い過去のこと

遠い遠い過去のこと....

人生は底知れず空しい
人生は底知れず淋しい
魂は無劫の寂寥の中を旅する

やがて人はゆく
暗黒の世界へと旅立つ


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